しかも、チムニーであろうが海底下であろうが、熱水と海水を混合することによって初めて代謝(生命活動のエネルギー獲得)が可能になる仕組みであることは、既に理論的な予想として報告されていた。だから微生物生態系は、海底下数メートルであろうとチムニー内部数センチだろうと、基本仕様は同じはずだと。

つまり熱水噴出孔チムニーの結果から海底下生態系の基本的な成り立ちを先行的に予測できると考えたのだ。

3つ目。海底にニョキニョキ生えるチムニーだけではなく、熱水からも海底下生態系の成り立ちを明らかにしようと考えた。混じりっ気なしの高温熱水には、直接海底下環境から運ばれてくる微生物が含まれているはず。そのシグナルを検出しようというのだ。

技術的な観点から言えば、海底でどれだけ注意深く高温熱水のみを採取しようとしても、残念ながら一般的には、常に海水がわずかに混ざるモノなのだ。一方、高温熱水に含まれる海底下生態系の微生物のシグナルは、高温であるがゆえに「極うすうす」であることが多く、わずかな海水が混じって持ち込まれた微生物のシグナルが打ち勝ってしまう可能性が高かった。そこでボク達は、高温熱水に含まれる微生物細胞や分子を濃縮する装置=現場培養器というモノを開発し、それを使う事で直接海底下環境から運ばれてくる微生物のシグナルを検出することを目指した。

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