ところが1970年代になって、貴金属不足と深海アクセス技術の進歩に後押しされ、多くの国や企業が深海での採鉱を真剣に考えはじめた。そんな背景から、グローマー・エクスプローラー号の架空の使命には、なんともそそられる説得力が感じられたわけだ。

 こうして1970年代から80年代前半にかけて、マンガン団塊採掘のための技術開発に巨額の資金が投入された。とはいえ私から見れば、まだ地図もなく、人間が目にしたこともない広大な深海底を掘り崩し、利用しようとするのは時期尚早としか思えなかった。そこには鉱物以外のものもあるだろうし、そうしたものの重要性については何もわかっていないも同然だったのだから。

 今では、深海の砂や泥のなかにすむ微生物の多様性は、陸上で最も生物の多様な場所よりも豊かな場合すらあることがわかっている。どの国も管轄していない未踏の海域で採掘活動を行えば、破壊的なものになるのは疑いない。それなのに深海採掘に関する意思決定も、結局いつものように経済的な「見返りが大きい」かどうかだけで下されることになるのだろうか?

原油流出の悲劇

 生物以外の海の「資源」のうち、良かれ悪しかれ最も注目を集めてきたのは、石油とガスだ。第2次世界大戦が終わる頃には世界的に石油産業は確立されていたが、その触手を海に伸ばしはじめたのは1947年のことだ。ほどなく海上専用の掘削システムが開発され、メキシコ湾は沖合油田技術開発の一大実験場となった。

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