第62回 ベトナムの不思議な緑の「ミルクレープ」(ベトナム後編)

 ベトナムでは、旧暦12月23日「かまどの神様」を祀る日の供え物などとして、チェー・チョイ・ヌックは欠かせないものだそうだ。かまどの神様というのは、ベトナムに伝わる台所と家を守る神様。その起源となる話が興味深い。

 夫婦げんかをして家を出た夫が、しばらくして物乞いである家を訪れた。そこにいたのは偶然にも既に再婚していた元妻の姿。彼女は再会を喜び、元夫に食事をふるまったが、現在の夫が帰宅したため、あわてて元夫を藁の中に隠す。

 ところが、何も知らない新しい夫が堆肥とするためにこの藁に火を付けてしまう。元夫は声を上げると妻に迷惑がかかると思い、じっとがまんするが、それを見た妻が苦しんでいる元夫を思い自分も炎に飛び込んでしまう。愛する妻が炎の中に飛び込むのを見て、新しい夫も後を追う。こうして3人は焼死してしまうが、愛のために命を落とした3人を憐れみ、天の神は彼らを神様としたのだという。

 話の詳細にバリエーションがあるようだが、おおむねこうした内容だ。次にチェー・チョイ・ヌックを食べる時は、少し切ない気持ちになりそうです。

「アンゴン」のチェー・チョイ・ヌック。こちらはココナッツソースもかかったもの。ゴマはこのチェーの定番トッピングだそう(写真クリックで拡大)