第6話  JAMSTECの拳―天帝編―

その6  この研究計画はオレ様のために存在するのだ

そしてその議論は、ボクの最も恐れていた方向にも発展しようとしていた。つまり「アーキアンパーク計画」が深海熱水の地下微生物を扱うのならば、JAMSTECの地下生命圏研究は深海熱水の研究には手を出さないという霞ヶ関的論理に基づく「仕分け」が秘密裏に行われようとしていることだった。

それを知ったボクはさらに愕然とした。今度こそ、本当に酒とドラッグにおぼれる日々になりそうだった。ボクは「ずっとやりたくてやりたくて仕方のなかった深海熱水に生息する微生物の研究をする」ためにJAMSTECに来たのであって、JAMSTECに入るのが目的ではなかったのだ。JAMSTECで深海熱水の微生物が研究できないんなら、「今度こそJAMSTECなんてこっちからお断りじゃ」と腹を括った。

そんな覚悟を決めた憤りを掘越先生にぶつけてみると、また思いもよらぬ予想外な答えが返ってきたんだ。

「オレはアーキアンパーク計画に参加するなとは言ったが、深海熱水の研究をするなとは言ってないぞ。その研究はJAMSTECの地下生命圏研究の中に潜り込ませればいいだけの話だろ。要は相手よりいい結果を早く出せばいいんだろ。結果で勝てばいいだけだ」

つまり「アーキアンパーク計画には参加できないが、深海熱水の微生物の研究はやってもいい」と。そして「やるなら研究成果で示せ! 成果で勝てばJAMSTEC上層部も決して文句を言えないはずだ」と。