第7話 ニョロニョロ宝地図で、こりゃダメだ。
「わかった、わかった、もういいよ、もういいよ」
と、まるで逃げるように犬たちから離れると、またも悩ましい声で、
「いかないで~」
と響いてくる。このドッグヤードの犬たちの人間好きときたら、ハンパではない。
と、そこにスティーブの声が聞こえてきた。
「そろそろ夕方だから、犬のご飯をあげる時間だよ」
日没が早いために、夕方と言っても3時である。
来たばかりで何も分からない私に、スティーブがトーニャの代わりに犬の餌の作り方を教えてくれた。
橇犬たちの夕飯のメニューは、お品書き風に言うと、
『ふやけたドッグフードと生肉のどろどろスープ、ビタミンとカルシウム剤入り』
レシピは、こんな感じである。
バケツ1杯(約8匹分)。
あらかじめ湯でふやかした固形乾燥ドッグフードをバケツ3分の1。
歯ごたえを残すために、ふやかしていないのをバケツ3分の1。
食肉工場から下がってくる牛肉のくず肉を、両手で大きく3つかみ。
顆粒ビタミン剤とカルシウム剤、容器のキャップ3杯。
脂肪分の補給に、サラダ油、計量カップ2杯分。
外は寒いので、熱湯をかけてどろどろとかき回せば出来上がり。
これを、6杯作る。