第6話 やった!この大自然も犬たちも私だけのもの!!
トーニャを乗せた小型機を見送り、一天にかき曇る雲の下で、私は漠然と考えた。
まず思ったのは、いきなりこの状況は、日本ではありえない……、ということである。
飛行機から下りたら、もう帰る手段がないこの大自然のど真ん中で、なんの打ち合わせも、予行練習も、準備体操も、名刺交換も(持っていないけど)、なんにもないまま、突然、「橇犬たちをよろしく~」と置きざりにされたのである。
普通なら、「ど~しよ~」となるところだ。
が、私の心は沸々と嬉しくなってきて、そうか、ということは……、
「しばらくの間、この大自然も、犬たちも、私一人だけのものなのだ~。やった!」となった。
しかも、森の生活も、橇犬たちとの暮らしも、すべてが初めてである。