そんなボクの唯一の頼みの綱は、渡米する前にJAMSTEC主催のシンポジウムで議論したことがある当時九州大学理学研究科の准教授だった(今も)石橋純一郎さんという、バブル期に流行したと思われる時代遅れのぶっとい黒いセルロイド縁の眼鏡をかけた(今も)特徴のある容姿をした若き熱水化学者だった。後から知った話だけれども、石橋さんは「深海熱水」の化学研究で博士号を取った日本最初の深海熱水博士だった。

頼れる黒眼鏡化学者

当時その分野では、「石橋の右に出る者はなし」と言われていてもおかしくはなかったはずで(今ではずいぶん前後左右に雨後の筍のごとく出没を許しているようだが)、それなりに偉ぶっていても良かったはずだが、本格的な深海熱水研究を始めて1年ちょっとのモノ知らずの微生物学研究者だったボクに、石橋さんはものすごくフランクに濃密な議論をしてくれたんだ。

「ボクの研究結果によると、深海熱水における微生物生態系の多様性は、その熱水の化学条件と深く相関していると思うんです。熱水の化学とか地質条件から、微生物や生物の棲み分けを説明できませんかね~?」とボクが聞いたとき、石橋さんは「それこそ、ボクら熱水化学者がずっとやりたいと思っていることの一つなんだよ~。多分それが真実だと思うんだよ。でも実証が難しいんだよね~」と答えたんだ。

日本最初の深海熱水博士になる直前の現九州大学大学院理学研究科准教授の黒メガネ石橋純一郎クン。1986年ぐらいの頃の写真と思われ。船はドイツの海洋調査船ゾンネ号。ずいぶん前に本人から頂いた写真。皆さん思わず赤面してしまうようなダサいパンツを履いておられますなあ。名誉毀損で訴えられないように、「じゅんちゃん。プックリしたお顔が可愛いよ!」と言っておく。
(提供:高井研)

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