天候が不安定なために、飛行機はすぐにも折り返し飛び立つことになる。

 忙しく機内の郵便物を運び出すパイロットと行き違うように、村の男性たちが大きな生肉のかたまりを運んできて、機内に押し込んでいた。

(写真クリックで拡大)

 どうやら勝手にやっているらしく、それに気が付いたパイロットが慌てて、
「おいおい、そんな大きいものはダメだ。重過ぎて飛ばないよ」と、男たちの手を止めた。

「ま~、そこをなんとかしてよ。大物を仕留めたから、街の娘に送りたいんだよ」
 村の男性たちも譲らなかった。

「だから、大物だから困るんだよ。重量オーバーで落ちちゃうよ」
 一見アメリカ空軍のトップガンなみにイケメンのパイロットも、これには頭を掻きながら困っていた。

 パイロット泣かせのこの肉は、森で仕留められたムース(ヘラジカ)で、太ももや背肉の部位である。重量にして、私の体重と同じくらいはあるのではないだろうか?

 この辺りには、猟によって生計を立てている人が多いために、街に住む家族へのお土産と言えば、この肉なのである。

 きっと彼らにとって、それは、ナポレオンの凱旋のように誇らしいことなのだろう。

(写真クリックで拡大)

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る