第5話「まさ~か~」のええええええええぇ!
「え? なんて?」
飛行機のアイドリングが煩くて聞こえない。
「だから……、今会ったばかりだけど、ぐっばいなのよ」
「え? ぐっばい?」
「そう。私、あなたが乗ってきた飛行機に乗って、街に帰るのよ」
「え?」耳を疑った。
「犬たちのこと、ヨロシクね」
そう言ってトーニャは、爽やかな笑顔を残して、ボロ機の機内へと乗り込んだ。
「バイ、まさ~か~」
「え?」
そして小型機は、もの凄いプロペラ音を立てながら砂利の滑走路をガタガタ走り、重たそうに飛び立つと、雲の隙間に消えていったのだった。
「え?」
「ええええええええぇ!」
つづく

廣川まさき(ひろかわ まさき)
ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/