第9回 眠れない人、眠らない人

 アメリカ陸軍で近接戦闘の訓練を担当しているディンゲスという女性兵士は、4階級ある戦闘訓練レベルで「レベル2」を教える資格を持っている優秀な兵士だ。レベル2とは同時に2人の襲撃者を相手に戦うことができる階級をしめす。

 しかし、このディンゲスは「致死性家族性不眠症」の遺伝子を継ぐ家系の出身なのだ。

「この病気の主な症状は眠れなくなること。まず昼寝ができなくなり、やがて夜間の睡眠が途切れ、ついには全く眠れなくなる。通常は50歳代で発症し、発症後1年ほどで、病名が示す通り、死にいたる」

 という恐ろしい病気で、世界にもこの遺伝子を継ぐ家系は40家族しか知られていないという。この病気の原因はプリオンと呼ばれる異常なたんぱく粒子が脳にある視床に蓄積されるからだと考えられているが、プリオンがなぜ蓄積されるか、という段階から原因はまだ不明という。

 こういうレポートを読むと、わが「不眠症」などほとんど不眠のレベルにも至っていない、ということを知り、にわかに恥ずかしくなる。