第9回 眠れない人、眠らない人

 オアシスの夜というのは一番快適な眠りを得られる環境ではないか、と思ったが大間違いだった。動物たちが実にうるさいのである。あのように自然そのままの環境に育った動物たちというのは本能的に原始に呼び戻されるのか、豚や羊などは夜のほうがコーフンしひっきりなしに鳴いている。刺激されてロバや牛もさわぎ、犬や鶏が競うようにして鳴き続ける。音の性質は違うが街の夜よりもオアシスのほうがはるかにうるさく、寝入るまで苦労したほどである。 

 こんなふうに外国および国内の旅なども合計するとぼくは作家のなかでは野外のテントをはじめとしたひどい条件のところでもっとも数多く寝ていることが多いヘンな奴だと思うのだが、結果的にいうとこの野外のテントや廃屋のようなところでの睡眠が一番快適なのである。

 だから、清潔で安全な都会の自宅の自室でぬくぬくしたベッドにもぐり込んで「眠れない」などといっても、カウンセラーさえ、あまり真剣にその苦しみを理解してくれなかったりする。苦しみの真実を理解してもらえない、というもどかしさは当然ながらある種の悔しささえ感じる。やはり、ひねくれた「不眠症」男なのだ。

 けれど「不眠」「不眠」とさわいでいるが、人間、歳をとってくると必要な睡眠時間はどんどん減っていくそうだ。睡眠による脳とか体の休息が若い頃ほど必要でなくなっているから、ということと「眠り続ける」には体力がいる、という寂しい話を最近はじめて知った。