第9回 眠れない人、眠らない人

オアシスはうるさい

 なるほど、思えばこれまで外国などへの長い、そこそこ冒険的な旅に出るとき「不眠症」はあまり気にならない日々をおくっていた。毎日移動する旅などになると、その日によっては廃屋のようなところに泊まるしかなく、しかも電気も水道もない。隙間からいろんな虫などが入ってくる、という普通の感覚でいえばたいへん条件の悪い場所であればあるほどぼくはアマノジャクのようによく眠れたりするのである。

 それは移動によって毎日とことん疲れている、ということも大きく関係している筈だ。さらに夜更かししていても電気がないとヘッドランプで文庫本などを読むしか時間の過ごし方がなかったりする。それですべて「諦める」ことになる。外に強い風が吹いていたりすると、かえってそれが睡眠の導入効果になったりする。自然の音、というのは睡眠の一番の味方なのだ。

 けれどこんな例もあった。以前タクラマカン砂漠を楼蘭までいく「日中共同探検隊」の一員として砂漠を旅したとき、途中にオアシスがあるとそこにキャンプをはる。ある大きなオアシス(ミーラン)に泊まったときだ。ここには沢山の人が住んでいて、同時に沢山の家畜がいる。野良犬なども夜更けに群れをつくって沢山走り回っている。