第4回 竜巻の内部がついに見えた!

 もちろん、竜巻はスケールが大きいものでも数100mで、寿命も数10分と短いために、直接観測するのは困難だ。しかし、積乱雲をMPレーダで見て、竜巻が発生しているかどうかを判断できる可能性があるという。

「その指標がTDS(トルネード・デブリ・シグニチャー)です。TDSは竜巻により巻き上げられた木々や家屋の破片(デブリ)の存在を示す指標で、雨の中にどんな異物が含まれているかが分かります。実際に、アメリカではTDSから予報官が竜巻と判断し、その近辺の人に警報を出すことがあります。実は、つくばでの先日の竜巻でも、竜巻の発生場所から約15kmにある気象研究所のレーダで、巻き上げたデブリ(TDS)が見えていました」

 竜巻が出来ていたら、もうどこかで被害が出ているわけで、それ自体は予報ではなく現状把握だ。ただ、そこから先の動きを予測して、下流側の人々に知らせることはできる。TDSの観測による竜巻観測・予報に熱心なアメリカでも始まったばかりであり、日本ではまさにこれからの話となる。

 いずれにしても、竜巻について伺ったことで興味深かったのは、同じ積乱雲由来とはいえ、注目する極端気象の違いで、それぞれ積乱雲の違った側面を見ることになるということだ。ゲリラ豪雨に注目した場合と、竜巻に注目した場合では、積乱雲のふるまいで強調される部分が違っている。おそらく様々な側面から、あの手この手で観測し、考察することで、「全貌」へと近づくことができるのだろう。

巨大な積乱雲「スーパーセル」を撮影した2012年7月号の特集「荒ぶる嵐の素顔」の写真を見ながら。(写真クリックで拡大)

つづく

真木雅之(まき まさゆき)

1954年、愛媛県生まれ。理学博士。防災科学技術研究所観測・予測研究領域長。筑波大学連携大学院教授。1983年、北海道大学大学院理学研究科修士課程を修了。北海道大学理学部を経て、85年に国立防災科学研究所に入所して以来、気象レーダの開発および気象レーダによる自然災害の研究に携わる。2000年よりマルチパラメータレーダによる降雨量推定の研究を開始。現在は文部科学省科学技術振興調整費プロジェクト「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」研究代表者を務め、首都圏Xバンドレーダネットワーク「X-NET」による豪雨・強風監視技術の構築に向けた研究プロジェクトを進めている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合でアニメ「銀河へキックオフ」として放送中。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider