波頭が崩れるような大きな波であれば、すぐにあきらめたと思います。

 けれど、荒れているとはいえ、細かく低い波の連続だったので、漕いでいけそうな気もするのです。

 そこで、「とりあえず出てみて、だめだったら引き返せばいい」と考えて、岬の突端からすこし先へ進んでみることにしました。

 いまにして思えば、その判断は、すこし軽率だったかもしれません。

 いよいよ岬の先に出ると、風がびゅうびゅうと体いっぱいに吹きつけてきました。

 自分の肌で感じてはじめて、どれくらいの強さの風が吹いているのかを、本当に理解しました。

 波も、離れて見ているのと、実際に上にのってみるのとでは大違いです。

 それほどでもないと思えた波でも、ちいさなカヤックを翻弄するには十分な高さがあって、しかも、短い間隔でつぎつぎと押し寄せてくるのです。

 ぼくを乗せたカヤックは真横からの波を受けて、左右にぐらぐらとうねりました。

 転覆しないように、パドルで水面を押さえて、なんとか姿勢を保ちました。

 <これはやばいかな……?>

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