国境ラインに沿ってまっすぐ東へ進むと、右手前方に「合衆国岬」と名付けられた岬の突端が見えてきました。

 その向こう側を見たとたん、背筋に緊張が走りました。

 いちめん波が荒れていて、これまで旅をしてきた湖面とは明らかに様子が違うのです。

 それもそのはず、地図を見ると、バスウッド湖は合衆国岬から先で南に大きく開けていて、5キロ以上に渡って遮るもののない、まったくの吹きさらしの水路となっていました。

 南から吹く風は、岬の先にむけて勢いを集中し、湖面には白い泡がいく筋もの線となって流れています。

 目的のムース湖へ辿り着くためには、その水路の真ん中を通って、まっすぐ南下しなくてはなりません。

 ざわざわと波立つ湖面を見て、ぼくは先へ進むかどうか迷いました。

鮮やかなピンクの花を咲かせた野バラ。花粉を運ぶ虫たちの訪れを待っている。(写真クリックで拡大)

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