ドップラーレーダと呼ばれる従来型観測レーダは、降雨から反射してくる電波を捉えるものだった。発した電波が反射してくる強度から雨の位置や強さを推定する。さらにドップラー効果で帰ってきた電波の波長(周波数)がどれだけ変わったかもみて、雨がどの方向に動いているか情報を得る。電波強度プラスアルファなので、シングルパラメータ、あるいはダブルパラメータくらいか。なお、ドップラー効果とは、サイレンを鳴らした車とすれ違った時に急に音の高さが変わる、だれでも経験したことがある経験の背後にある物理現象だ。

 一方、MPレーダでは、レーダである以上、電波を発するのは当然として、その反射を水平・垂直の偏波に分けて観測・比較することから多くの情報を取り出す。偏波について少しだけ説明すると、電磁波は(もちろん光も含めて)「波」であるわけだが、ぼくたちが海の波から想像するのとは違う。通常の状態では、進行方向の上下左右360度すべての方向に振幅している。水平偏波、垂直偏波というのは、その水平成分と垂直成分ということだ。

従来のレーダと異なり、マルチパラメータレーダでは、電磁波を垂直と水平にわけて発信、観測するため、得られる情報が格段に多い。(画像提供:真木雅之)

「落下する雨粒は空気抵抗の影響で、上下につぶれた形をしているんですね。このつぶれ具合は雨粒が大きくなるほどはっきりしてきます。大きな雨粒が多いと、水平偏波での観測と垂直偏波での観測で反射の強さが違ってきます。これは反射因子差と呼ばれるパラメータです。さらに重要なパラメータとして偏波間位相差があります。これは水平偏波と垂直偏波の伝わり方、つまり速度がどのくらい違うかを表すパラメータで、大きな雨粒が偏平な形をしていることから発生する現象です。このように、反射因子差と偏波間位相差は雲の中の雨粒そのものの形や大きさの情報を反映しているパラメータですので、この情報を利用することにより雨の強さをより正確に求めることができます。Xバンドの波長は3センチほどでして、ほかの波長に比べて偏波間位相差を感度良く測定できる波長です」

落下する雨粒は上下につぶれた形をしており、つぶれ具合は雨粒が大きくなるほどはっきりする。タテとヨコに電波を分けてこの形状による違いを観測することで、雨の強さを正確に求められるようになった。(画像提供:真木雅之)

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