第3話 鼻づまり、虚弱体質、失神、なんでもござれチーム!

 そして、最も重い障害を抱えていたのは、4歳オスのソルティーである。

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 頑強な体を持ち、頭も良く、優秀なリーダー犬なのだが、脳の障害が見つかり、いつ起こるか分からない癲癇の発作を抱えていたのだ。

 誰よりも走るのが大好きで、ドッグヤード一番に大きな声で「僕を連れて行って!」と鳴き叫ぶ彼は、体も大きく、エネルギーに満ちた犬である。

 しかし、ソルティーの発作は、一生懸命に走れば走るほど、突如として現れ、突然に意識を失って痙攣を起こして倒れてしまうのだった。

 悲しいことに、一心不乱に頑張ることが、彼を失神させる原因にもなっていたのだ。

 こんな犬たちでも、犬橇を楽しむことができる。

 そもそも犬橇は、犬と人間とが一体となって、厳しい環境を乗り越えていく、旅の手段だ。レースを目的としたアスリートチームである必要がない。

 足が速くなくてもいい。

 障害や病気を持っていてもいい。

 のんびり行こう。

 そんなチームなのだ。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/