第4章 1921-1956 カラー革命と第一期黄金時代
第28回 エベレスト初登頂の手記で腰が引ける
第25回で紹介した原子力も前回のアクアラングも、戦争によって大きく発展したものでした。このように戦争はテクノロジーを飛躍させましたが、その一方で、歩みを止めたり後退したりした物事もたくさんあります。
ナショジオが力を入れてきた冒険・探検活動もそのひとつ。なかでも北極、南極につぐ未踏の地、世界最高峰エベレストへの挑戦は筆頭にあげられるでしょう。
でも残念なことに、エベレストの初登頂にナショジオは関係ありません。
協会がエベレストに興味がなかったはずはありません。何しろ世界でいちばん高い山ですからね。それに1933年8月号には「エベレストを空から征服(The Aerial Conquest of Everest)」という記事を掲載しています。イギリスの軍人である著者のブラッカー中佐は、空撮した写真をたくさん並べつつ、エベレストの山頂を飛び越えたときの様子をこんなふうに書いています。
「時が始まって以来、人類が目にしたことのないものを私は床の窓から目にしていた。その光景の恐ろしさは決して言葉にできないだろう……」
ナショジオを含めて、アメリカがエベレストに関われなかった理由のひとつに外交上のハードルがありました。
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