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- SEPTEMBER 2012 -
セイウチの腸で作ったパーカ
写真のイヌイットの男性が着ているパーカは、なんとセイウチの腸で作られたもの。20世紀の初めに、米国アラスカ州ノームの写真館で撮影された。
セイウチの腸は水を通さず、イヌイットの人々にとっては入手も簡単。この腸を乾燥させてから裁断し、耐水性の糸で縫い合わせる。男性が手にしているウミアク(カヌー)のような船にも、同じ縫い糸が使用された。パーカの裾の部分は、海に出る際にスプレースカート(こぎ手を水から守るためにカヤックに取り付ける覆い)の役割を果たしていた。
腸以外の内臓も活用された。膀胱は水を入れる袋に、縫い合わせた消化管は住居の窓に、広げた胃は太鼓に使われたという。
文=ジョナ・リッツォ
写真=Beverly B. Dobbs, National Geographic Stock