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ナショナル ジオグラフィック日本版　2012年9月号

ロマの成功者たち

  • 別荘風、寺院風、お城風……。人口5000人の町、ブゼスクの目抜き通りには奇抜なスタイルの屋敷が立ち並ぶ。男性は出稼ぎに出ていることが多く、女性は家事や子育てをする。
  • 復活祭の朝、ザハリア・ブラタが締めているのは金糸で織られたネクタイ。自分の名前と、愛車「ハマー」の文字が縫い込まれている。他の住人もこのスタイルをまねた。豪邸に暮らすある人物が言う。「ロマが貧しくて不潔だと思う人たちは、ここの暮らしぶりを見るといい」
  • 復活祭のパーティーの始まりを待つ6歳の双子、ジェルとエディのペトラキ兄弟。ブゼスクでは、1989年に共産主義体制が崩壊して以降、こうした豪邸が100軒以上も建った。この町のロマは主に、銀をはじめとする金属の売買によって富を築いた。
  • はやりの服を着て、町の中心部をぶらつくロマの若者たち。彼らの大半は高校を卒業しないだろう。ロマの社会では学校教育が重視されず、親たちは、息子にはできるだけ早くお金を稼いでほしい、娘には年下の兄弟の面倒を見てほしいと望んでいる。東欧では、ロマの子どもたちが学校で差別を受けることが多く、それも中退を増やす原因になっている。
  • ブゼスクに住むバンダナ・イスピランテと13歳の娘。寝室はベッドに飾られた聖母マリアの肖像画を除けば、新婚向けのスイートルームのような派手さだ。娘がヘッドスカーフと花柄のロングスカートというロマ女性の伝統的な装いに身を包むことは、まずないだろう。
  • 10代のマダリナ・イオンは、おもちゃに囲まれて暮らす。
  • 14歳の未来の夫、サミの写真の前でおめかしをする13歳のカシ。ブゼスクの裕福な家庭では、親が子供の結婚相手を決めるのが普通。カシはすでにサミの家族と暮らしていて、二人とも17歳を過ぎたら結婚する予定だ。
  • こうした豪邸には広い部屋がいくつもあるが、それらが使われるのは祝祭日や結婚式、葬式のときくらいだ。写真は、復活祭の準備で玄関ホールの掃除をするシモナ・イアンク。
  • 写真の夫妻は、きらびやかなダイニングルームで客をもてなすことはめったにないという。
  • 街角で世間話を終え、解散する年配のロマたち。マリン・ニコラエ（手前）によると、男たちの話題はたいていお金や家族のこと、そして幌馬車で移動しながら商品を売って暮らした懐かしい日々のことだという。
  • 路上で復活祭を祝うロマの人々。食べ物や飲み物、音楽には惜しみなく金を使う。謝礼を受け取っているのは楽団の一員。その額は数万円相当になることもざらだ。このあと依頼者の名前を大声で発表し、リクエストに応える。
  • 洗礼式の日に名付け親への謝礼として贈られた豚。高級住宅街の裏手には、こうした昔ながらの光景が残っている。幌馬車で流浪生活を送ってきた年配の人など、裕福になっても豪邸暮らしになじめず、離れのトイレや台所を使い続けるロマもいる。
  • ブゼスクの豪邸街を荷馬車で通る廃品回収業者。1989年、ルーマニアの共産主義体制が崩壊すると、この町のロマの多くは閉鎖された工場から金属を回収して売り始めた。なかでも裕福になった家族は馬と幌馬車を手放し、スポーツカーと豪邸を手に入れた。
  • カザンと呼ばれる銅製の蒸留器を磨く、ジェニカ・スタン。ブゼスクに暮らすロマは長い間、カザン作りによって生活を支えてきた。カザンは、プラムなどの果実酒を蒸留しブランデーを作るためにルーマニアで広く使われている。しかしルーマニアがEU（欧州連合）に加盟した2007年以降、自家製の酒に関する規制により、かつては1つ数百ドルで売られていたカザンの需要は減った。今では、ブゼスクで蒸留器を作るロマはほとんどいない。
  • 棺桶に入れられて帰郷したフロレア・ラドゥ（29）。スペインで送電線から銅線を取り出そうとした際に感電死した。弔いの鐘とクラクションが鳴り響く中、葬列が町を通り過ぎ、友人たちは告別ミサのために遺体を教会へ運ぶ。
  • ブゼスクの高級住宅街から離れた、貧しいロマの台所。6歳のイアスミナ・イアンクが祖父に踊りを披露している。スペインへ出稼ぎに行っている母親に代わって、祖父が子育てをする。ロマの家庭では、このように高齢者と子供だけで暮らすケースが多い。
  • 朝早くから歩道を掃き、水まきをするブゼスクの女性たち。しばらくすると、歩道沿いの国道70号線はトラックの往来で騒がしくなる。運転手の多くはスピードを落とし、ブゼスクの町並みを眺めていく。

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昔ながらの流浪生活をやめ、ルーマニアの小さな町の豪邸に暮らすロマの人々の知られざる日常。

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