第2話 氷蒼の瞳の橇犬アンは耳が聞えない

 アンの兄弟たちは橇犬の子でありながら、みんなペットとして貰われていった。

 奇しくも、耳の聞こえないアンだけが橇犬として生きていくことになったのだ。

 そんなアンの瞳は、まるで氷河の氷壁のように青く美しく、それでいて、今にもパリンと割れてしまう薄いガラスのように、繊細な輝きを放っていた。

 青々としながらも情熱的で、無垢に愛情を求めるようなうるうるしい瞳をするかと思えば、ハスキーが持つ狼のような鋭い眼光を見せるときもある。

 そんな氷蒼の瞳に、私はいつも、吸い込まれそうになるのだった……。

(写真クリックで拡大)

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/