第2話 氷蒼の瞳の橇犬アンは耳が聞えない

 アンには、特に多めにスープをあげることにしていた。

 橇を引く犬にしては体が小さく、冬を越すには毛が短過ぎるからだ。

 現代の犬橇レースが速さだけを求めて、足の速いポインターやグレーハウンドなどの種と交配させるようになった結果、今の橇犬の体は小さく、毛が短くなって、極北の寒さに弱くなってしまったのだ。

 アンもその子孫であって、目だけがハスキーの血を継いでいるが、体は柴犬ほどに小さく、セーターを着せてあげたくなるほど毛が短い。

 それに加えて、アンの耳が聞こえないのは、人工的な交配による障害ではないかと言う人もいる。

 かつて橇犬は、移動や旅の手段、労働作業犬として、熊のように頑丈な体を持ち、寒さに強い犬たちが使われていたが、犬橇レースの存在によって、すっかり犬橇の形が変わってしまったのだ。

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