硫酸被害に遭ったパキスタン女性の作品で2011年の日本写真家協会の名取洋之助写真賞、東日本大震災後の東北を撮った作品で2012年DAYS国際フォトジャーナリズム大賞を受賞した、1983年生まれの気鋭のフォトジャーナリスト。
 本誌2012年9月号に、歴史ある居住区を追われたトルコ・イスタンブールのロマの人々の写真を掲載、上のフォトギャラリーにはパキスタン、東北の作品を加えて掲載した。

 写真家になったきっかけは、国際関係学を専攻した大学時代のこと。アフリカ西部の国ガンビアに滞在し、現地の新聞社に頼み込んでカメラマンとして働かせてもらった。「色々な場所を訪れるうち、なかなかニュースにならないような人々の暮らしを、写真を通して伝えられるような写真家になりたいと思うようになった」

 パキスタンでは、硫酸被害に遭った女性たちを撮影した。現地では、結婚を断った報復や家庭内暴力の延長で女性の顔に硫酸をかける暴力が1年に200~300件あるという。「被害者は私と同世代。彼女たちの人間としての強さや、女性らしい気品を伝えられたら」と、女性たちと一緒に生活をして写真を撮影した。

 震災後の福島では、住み慣れた土地を去った人々の思いを遺そうと警戒区域や避難区域を撮影した。そのとき思い出したのは、トルコでロマの人々を撮ったときのこと。「何世紀にも渡って営まれてきた人々の暮らしが確かにあったということを記録したい」という思いが同じだったからだ。

 2012年7月から約5カ月にわたって取材したキルギスの「誘拐結婚」の実態を、ナショナル ジオグラフィック日本版2013年7月号で発表。世界的に広く注目され、フランスの報道写真祭の特集部門で最高賞、全米報道写真家協会フォトジャーナリズム大賞の現代社会問題組写真部門で1位を受賞。2014年6月、自身初の写真集『キルギスの誘拐結婚』を上梓した。世界各地の「ニュースにならない人々の物語」を取材していきたいと語る。

上のフォトギャラリーは『ナショナル ジオグラフィック日本版』2012年9月号「写真は語る」に、写真を追加して掲載した。


ナショジオ創刊125周年の記念イベント「もっと知りたい、地球のこと」(2013年10月14日開催)。登壇者のひとり、フォトジャーナリストの林典子さんは2013年7月号で話題となった「キルギス 誘拐婚の現実」を取材。その時の様子や取材を通じて印象に残るキルギスの女性などについてお話していただきました。