フォール湖のキャンプ場からスタートして、直線距離で言えば、15キロほど北上した地点までやってきたことになります。

 まっすぐ進んできたわけではありませんが、ゆっくり旅してきたので、実際に漕いできた距離もたいしたことはありません。

 でも、カヤックを漕いで、ポーテッジを2つ越え、アメリカからカナダの国境が見えるところまで来たのだと思うと、心理的には、ずいぶん遠くまでやってきたような気がしました。

水草を食べるオスのムース。毎年抜け落ちる巨大な角は、夏の間ベルベットのような皮膚に包まれて成長する。(写真クリックで拡大)

 北米大陸の内陸部で、こんなふうに国境が水平線の向こうに横たわっている場所があるなんて、これまで想像したこともありませんでした。

 そういうことは海の上の出来事だとばかり思っていたのです。

 カヤックの旅がはじまってからずっと、転覆したときのことを考えて、なるべく岸から離れないようにして進んできました。

 しかし、これから進むべき方角にいこうとすると、この大きく開けた湖の真ん中を1.5キロほど横切って進む必要がありました。

 安全を期して、南岸に沿って行くこともできるのですが、そうすると遠回りになってしまうのです。

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