第1話 深い荒野にきらめくピンクサファイアの粒子

 午後2時45分。

 冬の日照時間は非常に短く、太陽が低い角度まで落ちてくると、一面の雪原も、この周辺の白い樹皮をまとったアスペンの林も、全てがまっピンクに染まる。

 一日のうちで最も美しい時間のはじまりだ。

 犬橇はこの時間に走り出すのが、一番気持ちがいい。

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 犬たちを橇に繋ぐと、高揚を抑えられない犬たちのエネルギーが肩のハーネスからドッグラインへと伝わり、ラインがまるで鞭のようにピシッ! ピシッ! と音を立てた。

 出発の合図を待つ犬たちの目が、今か今かと私の一つ一つの動きを追う。「まだだ、まだだ」と、私はフットブレーキを踏み込む足に力を入れた。 

 毛糸の帽子を被り、その上からフードを被る。首の周りの隙間を塞ぐように、フードの上からマフラーを巻き、ビーバーの毛皮で作られた野球のグローブほどに大きいミトン(手袋)を手にはめると、準備はOK。 

 すーっと息を整え、犬たちが真っ直ぐに並んでいることを確認して、私は一声をあげた。

「ハイク!(走れ!)」