第5回 ロボットが人間とサッカーをする日は近い

 さて、主にロボカップ・シミュレーションリーグの話をしてきた。

 しかし、ロボカップの大会そのものは、それだけでは終わらない。

 いずれ、プレイヤーの意思決定を司る人工知能が、シミュレーションリーグから巣立ち、今よりもずっと完成度の高い人型ロボットに搭載される日がやってくる。その日のために、実機の開発と競技も様々なカテゴリーに分かれて行われている。遠大な目標に向けて、全方位展開なのである。

 実をいえば、ぼくがロボカップに出会ったのは今回のメキシコシティではなく、2004年ポルトガルのリスボン大会だった。同時期にサッカーのユーロ選手権が同国で行われており、ぼくはそちらを見に行ったのだが、試合がないある日、ふと街角で「ロボカップ」のポスターを見つけ「もうひとつのサッカー選手権」にふらふらと入り込んだ。

 鮮明に覚えているのは、当時からシミュレーションリーグは、今ほどではないにしろそこそこサッカーらしい戦いを繰り広げていたこと。思えば、この時、秋山さんも中島さんもすでにロボカップに参戦していた。シミュレーションの仕組みを日本語で説明してもらった記憶があるから、ひょっとすると知らずに接触していた可能性はある。

 しかし、今強調したいのは、むしろ実機の方だ。

 その時、アリーナで競技をしていたヒューマノイドのリーグは、実に単純なものだった。ゴール前に小さなロボットを立たせ、PKのようにボールを蹴らせる。つまり、サッカーの基本である「蹴る」という動作をさせるだけでめいっぱいのようだった。

ユーロ選手権と同時に行われていたロボカップ2004年ポルトガル・リスボン大会のヒューマノイドリーグのロボット。当時はボールを「蹴る」だけでめいっぱい。(写真クリックで拡大)