第4回 顔見知りができる旅がしたい

――今は仕事がお忙しいから難しいでしょうが、以前は1カ所に何日も滞在していますね。そういう旅が好きなのですか。

 ひとつの土地に長くとどまるのは、1人でもいいから顔見知りができるくらいの期間はいたいと思うからです。 

 同じ店で毎日ご飯を食べたり、お茶を飲んだりもするのですが、ほかの人に私を認識してほしいな、認識してもらってから移動したいという気持ちがあるんです。自分がそこに存在した痕跡を残すというか(笑)。

 食事にしても毎日、違う店へ行くより、同じところに行き続けたほうが何かが起こることが多い。ただ通り過ぎるように、毎日違うところへ行くと、どこで何をしたか、食べたかなんて覚えていられないですよね。どの店で、どんな顔の人が働いていたかという記憶も残らない。

 同じ店に何日もお茶を飲みに行っていたりすると、ずっと不機嫌な顔で皿を洗っていた子どもが、3日目くらいにようやくニコッと笑いかけてくれたりする。そういうことがあると、その店も、場所も、その子の顔も、洗っていた食器も記憶に残るんです。

 小さいできごとでも、そういうのが好きです。

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