第1回 人には決まった量の「旅運」がある

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 何でしょうね。しかし、戸惑いました。それまでは、旅先で出会った人に頼って、行く場所、見る場所を決めてもらっていたようなところが多分にありましたから、この先どうしたらいいのかと思いました。

 現地でどこへ行くかも、何をするかも、全部自分で決めなければならないわけでしょう。

――でも、旅というのは、何をするかを自分で決めて組み立てていくものでしょう。

 私、それがだめなんです。旅行のプランを組み立てるのが大の苦手。できうるならばしたくない。それに異国がこわい。

――まさか! これだけ旅をしていながら。

 でも、本当なんです。今もって旅慣れないし、私は旅に向いていないのかもしれないとも思っています。

――意外ですね。では、そんな角田さんが、なぜ旅に駆り立てられるのか、それをじっくりうかがっていくことにしましょう。

つづく

角田光代(かくた みつよ)

1967年、神奈川県生まれ。90年『幸福な遊戯』(角川文庫)で海燕新人文学賞を受賞。2005年『対岸の彼女』(文春文庫)で直木賞受賞。昨年は『八日目の蝉』(中公文庫)が映画化され、『ツリーハウス』(文藝春秋)が伊藤整文学賞を受賞した。これまでに30カ国以上を訪れ、『いつも旅のなか』(角川文庫)、『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』 (角川文庫)、『水曜日の神さま』(幻戯書房)など、旅をつづったエッセイも多数。近著は『月と雷』(中央公論新社)。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。