第1回 人には決まった量の「旅運」がある

――いやいや、そうあることではないと思いますが、今もそういう旅を?

 いいえ、今はだいぶ旅のスタイルも変わりました。

 最近はプライベートで旅をする時間がなかなかとれなくて、仕事で行くことが多くなりましたし。

 けれども昨年、ギリシャに行ったときに、久しぶりに昔の旅の感触を味わいました。4日か5日の短い滞在でしたが、懐かしかったですね。「あ、この感じ、この感じ」と思いました。

――その懐かしい旅の感触というのは?

 私は、何となく「旅運」というものがあると思うんです。

 街を歩いていて、目的地はどっちだろうと地図を開いた途端に、現地の知らない人が寄ってきて「私はガイドをしているんだけれど、今日は休みだから、行きたいところがあれば連れて行くわよ」と話しかけられたり。

 カフェでお茶を飲んでいると、前の席のおばさんが「これ、おいしいから食べなさい」とお菓子をくれたり。

 ギリシャは夫と一緒に行ったのですが、そういう幸運がたびたびありました。私も以前はそういうことが旅先でよくあったのです。でも、ある時期からそれがなくなったんです、パッタリと。