夜のうちに通り過ぎていった雲がまだ東の空に残っていて、それがだんだんと赤味を帯び、燃えるような朱色に染まったかと思うと、真っ赤な太陽が遠くの森の上から姿を現しました。

 すぐ足下にまで広がる湖面もまた、空と同じ色を映して、ピンクやオレンジ、赤紫の多様なグラデーションが、絶えず変化しながら、ゆらめいていました。

 どれくらいの時間、ぼくは湖畔に佇んでいたのでしょう。

 ゆっくりと移り変わる、北国の夏の朝。ただ一瞬として同じ色を見せない、うつくしい朝焼けの風景は、いつまでみていても飽きることがありませんでした。

 思い返すと、大学のワンダーフォーゲル部で山登りをしていたときも、日の出をみるのは大きな楽しみでした。

 山に登れば、いつでも日の出を眺められるわけではなく、前日に山頂近くの山小屋に泊まったときだけの、とっておきのイベントでした。

 なかでもすばらしかったのは、2年生の夏に登った岩手山の山頂から見た日の出でした。

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