第3回 自然欠乏症候群が子どもをむしばむ
この町には子どもが遊ぶのにとてもいい川があるのですが、学校は子どもの川遊びを禁止しています。川で遊んでいる子を見かけたら、学校に連絡してくださいとまで言う。ひどい話です。
子どもを自然の中で遊ばせない、自然から遠ざけるというのは、実はとても危険なことなんです。「自然欠乏症候群(Nature Deficiency Syndrome)」というのをご存知ですか。
――自然欠乏症候群?
日本ではあまり注目されていませんが、欧米ではすごく話題になっています。ものごとに集中できない、落ち着きがなくじっとしていられない。友だちとうまく遊べない。そういう子が増えて、学校では授業が成り立たないケースまで出ている。
――注意欠陥・多動性障害(ADHD)もその原因のひとつとされていますね。
それはこれまで、脳に何らかの障害があるためと見られて、薬物療法や心理療法がとられることが多かった。しかし、最近の研究で、自然の中で遊ぶ経験の少ない子に、そういう障害が多いことが指摘され、「自然欠乏症候群」として欧米でたいへん話題になっているのです。
つまり、幼いときから、自然の中で遊ぶ経験を積み重ねないと、五感が十分に発達しないおそれがあるということです。