第2回 背景に日本の消費爆発、定着した薄利多売のビジネスモデル

日本国内の加工品、かば焼き工場(写真クリックで拡大)

 だが、この「多売」がもたらしたものは、ただでも深刻化していたウナギ資源のさらなる悪化であった。ウナギ資源の危機が深刻化する中、このような「質より量」、「薄利多売型」のウナギ消費がいつまでも続かないことは明白なのだが、日本のウナギの販売、流通と消費の構造に大きな変化は見られない。

 これほどまでに資源が悪化し、ウナギ価格が高騰する中で、「夏の土用の丑の日」に向けて、コンビニやスーパーが依然として、ウナギ製品の消費を煽り、中には値下げまでして「薄利多売」を続けようとしている業者があることが、それを象徴している。

 ニホンウナギの不漁対策として、アメリカウナギはおろか、オーストラリアや東南アジア、果てはアフリカ東海岸のウナギにまで手を出す業者が増加している点も、過去の状況とまったく変わっていない。

 資源状況の悪化と外来ウナギの流入によって、良質なウナギの市場での供給量が減少、製品の質の低下も指摘されている。「薄利多売」「質より量」のウナギビジネスが今後もさらに続くならば、資源の減少はさらに深刻化し、質の悪い製品を食べさせられる消費者のウナギ離れに拍車がかかり、ウナギ業界全体の収益の悪化と地盤沈下が加速されるという三重苦の悪循環がいつまでも続くことになる。その行きつく先は、ウナギ資源の枯渇とウナギ産業の崩壊だろう。

※     ※     ※

 資源の危機を前に今、ウナギ漁、養殖や加工、販売流通にかかわる業者、そして何よりも「安ければいい」という消費者の発想の転換と、責任ある行動が求められている。次回ではウナギの危機を打開するために何が必要なのかを考えてみたい。

つづく

井田 徹治(いだ てつじ)

共同通信社 編集委員。1983年に東京大学文学部を卒業し、共同通信社に入社。以降、環境と開発の問題を長く取材、気候変動に関する政府間パネル総会、ワシントン条約締約国会議、環境・開発サミット(ヨハネスブルク)、国際捕鯨委員会総会など多くの国際会議も取材している。著書に『サバがトロより高くなる日――危機に立つ世界の漁業資源』(講談社現代新書)、『ウナギ 地球環境を語る魚』(岩波新書)、『生物多様性とは何か』(岩波新書)など。