「妹がまだ幼かったときのことです。隣の家に住んでいた妹の友達のお母さんが亡くなって…。妹が『お餅が沢山あるね』と言ったら、友達が『あなたのお母さんが亡くなったら、あなたもお餅をちょうだいね』と言ったそうなんです」と趙さんは思い出を語ってくれる。切ないけれど、お餅を通した韓国の生活の一場面が浮かんでくる。

 韓国の重要な行事の一つ、旧暦の8月15日、日本のお盆にあたる秋夕(チュソク)でも、餅菓子は欠かせない。この行事を彩るお餅は「ソンピョン」(ソンは松、ピョンは餅の意味。松の葉を敷いた蒸し器で作るうるち米の粉を使った餅)。伝統的には半月型をしたお餅で、中には小豆やゴマなど様々な餡を入れて作る。

 「昔はみな色々な餅菓子を家で作ったものです」と趙さん。趙さんのお母さんは子供たちの誕生日に、それぞれが好きなお餅を作ってくれたそう。また、「インジョルミ」(平たい餅の意味)という蒸してついたお餅を、きな粉やゴマにまぶしてお正月などによく食べたものだという。テーブルに広げたお餅をみんなでちぎって食べたそうだ。
 「今は餅菓子はお店で買う人が多いですね」。

 韓国では、パン屋の感覚で餅屋が街のそこここにあるのだ。

真っ白な姿で大きくなるよう祈りを込め、生まれてから100日目や1歳の誕生日に用意されるという「ペクソルギ」。(写真:中川朋和)
ムジゲトック。白、ピンク、黄、緑、茶という5色の餅を重ねたもの。白以外はそれぞれ、いちごの果汁、カボチャ、ヨモギ、シナモンの粉を混ぜたもの。子供の1歳の誕生日には、色とりどりの将来を願って用意される。(写真:中川朋和)
お盆の頃のお菓子「ナギョソンピョン」(ナギョは葉っぱの意味)。ソンピョンを趙さんが今風にアレンジしたものだ。(写真:中川朋和)
ヨモギを使ったお餅は様々なバリエーションがあり、端午の節句などの定番。写真は「スッチョルピョン」(スッがヨモギ、チョルが平たいという意味)という伝統的なヨモギ餅。表面にはゴマ油が塗られている。生のヨモギは4~6月頃にしか採れないので、まとめてゆでて冷凍し、1年を通して使うのだそう。(写真:中川朋和)

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る