第1回 乱獲で資源は危機的に、生息地破壊も一因

 もう一つの、そして恐らく最大の原因は稚魚と成魚の乱獲である。欧州ではコンピューターシミュレーションなども交えた研究によって、シラスウナギ漁獲の影響やそれを規制することによる資源回復効果に関する研究が進み、これが行政に取り入れられて、各国で漁業や取引規制、資源管理などが進み始めた。

世界のウナギの70%を食べる日本人

 日本は世界で漁獲されるウナギの70%を消費する最大のウナギ食大国であるのだが、シラスウナギ漁の実態に関する信頼すべきデータはほとんどない。このため、日本のシラスウナギ漁が資源にどれだけの影響を与えているのかに関する研究もほとんど存在しない。

 だが、海外の研究成果や、毎年大量のシラスウナギが河川に遡上する前に大量に漁獲され、産卵に下る親ウナギ(下りウナギ)も、かなり以前から高級食材としてかなりの量が漁獲されていた実態からして、日本でもウナギの乱獲が資源の急減の大きな原因であることは論をまたないだろう。

 ヨーロッパウナギの激減にも、90年代後半からの数年間に、大量のシラスウナギが漁獲され、中国の養殖施設経由で日本に輸出された事実が深く関連しており、世界規模でのウナギの減少には、最大のウナギ消費国である日本の業者と消費者の責任が極めて大きいということになる。ウナギ資源の危機が顕在化してきた今、日本は、ウナギ資源の保全と持続的な利用の実現するための大きな責任を負っているのである。

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 ウナギの資源減少の背景には、1980年代後半から始まった日本のウナギの利用と消費構造の大きな変化があった。次回はこの点について紹介したい。

つづく

井田 徹治(いだ てつじ)

共同通信社 編集委員。1983年に東京大学文学部を卒業し、共同通信社に入社。以降、環境と開発の問題を長く取材、気候変動に関する政府間パネル総会、ワシントン条約締約国会議、環境・開発サミット(ヨハネスブルク)、国際捕鯨委員会総会など多くの国際会議も取材している。著書に『サバがトロより高くなる日――危機に立つ世界の漁業資源』(講談社現代新書)、『ウナギ 地球環境を語る魚』(岩波新書)、『生物多様性とは何か』(岩波新書)など。