第8回 草も動物も減少 かわりゆく遊牧民社会

激変の目撃

 モンゴルにはじめて行ったのは1980年代のおわりの頃だった。その当時は、まず日本から北京まで行って、そこで必ず1泊し、翌朝出る飛行機でウランバートルに飛ぶしか方法がなかった。

 日本からウランバートルまで直線距離にすれば飛行機で3時間もかからないくらいなのだが、どういう理由なのか当時は必ず北京に泊まらなければならなかった。

 北京から出るモンゴルの飛行機の搭場口は空港の一番はずれで、しかも飛行機まで歩いていく。なんとなく中国当局のモンゴルに対する「軽視」を視覚や肌で感じた。

 どこの国の飛行機もそのキャビンにはいったときに、もう「その国」の気配に触れたな、ということがわかる。たとえばむかしのロシアだ。独特の冷たい凝視や沈黙。メンナテンスの悪い古い座席やら暗い照明器具。国際線なのに半分擦り切れたようなセーフティベルト。それに文句をつけられないようなピシッとした油断のならない緊迫した空気。

 モンゴルの国営航空のキャビンは乳やチーズの匂いが濃厚にした。もっといえば動物の匂いだ。まだこちらの体は北京にいるが、自分はこの飛行機が運んできたモンゴルの空気の中にもう入り込んでいるんだな、という実感があった。なんだか嬉しかった。

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