日常のコミュニケーションには、身ぶり手ぶりが活躍した。たとえば食堂で朝食を頼むときは、だいたいこんな調子だった。
ウエイトレス:いらっしゃいませ、何になさいますか?
ジョン:(指を2本示し、次に卵を割る動作をしてみせる)
ウエイトレス:2個の、えーと何かしら……そうか、卵ね。料理のしかたは?
ジョン:(天を仰ぎ、目をパチパチとまばたく。さらに上を指さす)
ウエイトレス:わかった! 目玉焼き(サニーサイドアップ)ね。
こんなやり方で、うまくいけば、みごとな半熟の目玉焼き(しかも卵2個分の!)と紅茶にありつくことができた。
最後に一つ。沈黙は、なにも17年間続けなくてもいい。 「意識的に話さずにいること、集中して聴くことの良さを体感するのは、どこででもできるし、数分間でもかまいません。その沈黙の中に、私たちはお互いを見つけ、平和を見いだすでしょう」
ジョン・フランシスは静かに話を締めくくり、再びバンジョーを弾きはじめた。
・ジョン・フランシスのプレゼンテーション
・TEDxTokyo 2012 その他のプレゼンテーションはこちらで見られます
ジョン・フランシス(John Francis)
1946年、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアの移民家庭に生まれる。71年、原油流出事故を目にしてショックを受け、翌年から車に乗るのをやめる。82年NPO「プラネットウォーク」を設立。 83年、西海岸から東に向けて歩く沈黙の旅を始め、90年東海岸に到着。その後、手作りの帆船でカリブ海を渡り、ベネズエラからアルゼンチンまで歩く。土地資源の博士号など三つの学位を取得、国連環境計画(UNEP)の親善大使なども務めた。そのユニークな旅路を『プラネット ウォーカー 無言で歩いて、アメリカ横断17年』として出版。現在も精力的に環境問題に取り組んでいる。