第5回 消滅危機言語をなぜ守らなければならないのか

 というのも、インタビューの中で、我々は、言語と方言の垣根を、言語学的というよりも、政治的文化的な要素が強いと知ったばかりではないか。

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 木部さんが語ったスウェーデンの例で出てきたのは、すべて欧州言語だった。欧州内では、国境があるがために「互いに通じるのに独立言語の扱いを受ける」ことが多い。スウェーデン語はデンマーク語と通じるそうだし、スペイン語とポルトガル語もだいたい通じる。

 一方、ちゃきちゃきの江戸っ子の話者と、鹿児島弁話者は、きっと互いの「母語」では話が通じないだろう。実は、日本でも、共通語、標準語という概念があって、初めて様々な地域出身者の会話が成立してきた。我々の社会は、もとから多言語状態なのだ。20世紀から21世紀にかけて、その多様性を抑圧する方向でひたすらことが進んできたという事実があるにせよ。

「──方言コスプレって言葉がありますよね。1言語(方言)だけ、あるいは共通語だけじゃもう駄目な時代で、シチュエーションによって切りかえられると、人間関係が非常にスムーズになるとか、それだけで楽しいとか。言語の引き出しが多い人は、豊富なことばの文化を持っているわけですね」