第5回 消滅危機言語をなぜ守らなければならないのか

「先日、スウェーデンに行ってきたんですけど、みんな英語が上手で、私たちみたいなスウェーデン語がしゃべれない人がいると、途中で英語に変えるんですね。途中でフランス語に変わった人もいましたね。フランス出身の人で、彼はフランス語、英語、スウェーデン語、あとドイツ語もしゃべれるかもしれません。そんなのはあの辺では当たり前なんですよ。パッと切りかわって、全然違和感ない」

 もちろん、ヨーロッパの言語は、ルーツが近いし、日本語のネイティヴが英語を習得するよりずっと簡単に互いの言葉を覚える。いや、欧州に限らず、世界では複数言語環境はわりと当たり前のようにも思う。

 シンガポールに行くと、マレー語やタミル語や中国語を母語とする人たちが、英語で語り合っている。アフリカでは、きわめて多様な言語を背景に持ちつつ、英語やフランス語を共通語として使っている社会が多い。植民地支配の歴史を考えると、ちょっと複雑な気分にもなるのだが、何はともあれ、基本となる母語を持ちつつ、複数言語を使うというのは、ヒトとしてそれほど不自然なことではないのかもしれない。

 とはいえ、日本語で育った者にとって、英語やフランス語や中国語や韓国語や、その他言語の習得はやはり大変! と思う人は多いだろう。

 ところが木部さんは、「そんなことはない」とあっさり言うのだ。