第5回 消滅危機言語をなぜ守らなければならないのか

「たしかに、ものの名前などは、生活に非常に密着してるので、人間の役に立つか役に立たないか、毒かどうかといったことは、言語として非常に厳密に区別しているわけです。それがわからなくなるっていうことはありますよね。だけど、それを強調するのは、ちょっと政治的な感じがしますね」

 木部さんが指摘するのは、生物多様性を語る時に、よく使われる言説。

「薬になる草があって、それをどの国がどれだけ取っていいかとかね。何かそういう話になってしまいますよね。植物の多様性ってそうじゃないでしょうっていう気がするんですが、どうしても政治的な利益関係みたいなところにいっちゃうんですよね。言語学者は、別にそういう発想じゃないと思いますよ」

 生物多様性についても、重要性を主張してきた人たちは、経済的なメリットのために、活動してきたわけではない。生物の多様性を守ることが、我々が住んでる世界そのものの価値につながっていくと信じている人が多い。これは個人的に取材を通じて確信している。しかし、いざ万人を説得し、例えば生物多様性条約を批准しようとすると、経済的な価値などを強調せざるを得ないようだ。

 では、言語学者が、言語の多様性を重視する本質的な理由はなにか。英語だけで済ます世界ではなく、多様な言語がある世界が好ましいのはどうしてなのだろう。