第2回 方言は「汚い言葉」?

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「あの頃、どんな地域でも、方言をむしろ汚い言葉として見る傾向がありました」

 国立国語研究所の木部教授は言った。

 木部さんがフィールド調査を始めた1980年代の日本での話だ。

 日本の言語学者、特に方言研究者は、80年代からその傾向に気づいて危機感を抱いており、勉強会などを開いていたそうだから、それに先行してもっと早い時代から、「危機」の種は蒔かれていたはずなのだ。

「方言札を知っていますか」と木部さんは聞いた。

 ぼくは知らなかった。

「わたしがフィールドにしていた鹿児島や沖縄は、標準語教育、共通語教育が非常に激しかったところなんです。方言札というのがありまして、学校で方言をしゃべると罰で札を下げさせられるんですよ。そういう教育を学校でやったのが、鹿児島県と沖縄県の2県なんですね」

 言葉の響きからネガティヴなものを予想していたが、それでもやはり衝撃を受けた。今ならば人権侵害などと言われそうな教育方針ではないか。

2012年7月号特集「消滅の危機にある言語の未来」
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