細長い回廊のようなニュートン湖はアルファベットのSの字を逆にしたように、左右に大きく弧を描きながら前方につづいていました。

 いまにも雨のふりそうな暗く低い雲をうつし、鉛のように鈍い灰色をした湖面にカヤックを進めました。

 途中で、岬が両側からせり出し、狭くなっている場所を幾度か通り過ぎました。

 そういう場所にさしかかると、ぼくはしばらく漕ぐ手を止め、慣性の法則のままに流されて、あたりをうかがいながら、ゆっくり通り過ぎるのが好きでした。

 まるで異界への門のように両側に森が迫ってくるので、息をひそめてしずかに通り過ぎたくなるのです。

 その門を過ぎるとまた、黙々と腕を8の字に動かして、勢い良くパドルを漕いで前に進みました。

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