しかし、もちろん完全な水平ではありません。岩盤のくぼみの部分には、氷河の解けた水がたまり、雨が降ればその水も流れ込むようになって、無数の湖となりました。

 このようにして、いまぼくがカヤックで旅をしているような、「水浸しの地形」が生まれたというわけなのです。

 最後の氷河期から現在に至るまで約1万年。岩盤の水面から上に出た部分には花や草が生え、それが枯れて土となり、だんだんと高い木が育つようになりました。

 しかし、寒さの厳しい北国では、草や木の生長も分解も遅く、ノースウッズ全体での土壌の厚さは、現在でも平均して約20センチしかないといわれています。

 ノースウッズを覆っている針葉樹の森は、カナダ楯状地の固い岩盤に積もった、ほんのわずかしかない薄い土壌の上に根を張って、寒く厳しい気候を生き抜こうとしているのです。

 ぼくが見ている森と湖の風景も、長い地球の歴史のなかでは、ほんのつい最近生まれた、つかのまの姿なのかもしれません。

 さて、話をカヤックの旅に戻しましょう。

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