第4回 海のシステムを支える生き物たち

 カリフォルニア周辺の海域では、20世紀になってアワビが減っていったのと並行して、ラッコの数が緩やかに回復してきた。ラッコは、はるか昔の約500万年前からケルプ(海藻)の森でアワビと共存していた。もともと30万頭ほどいたが、そのほとんどは、1911年に完全保護の対象になるまでの間に、毛皮貿易の犠牲になってしまった。1938年に沿岸沖に約100頭が発見されたとき、アワビはまだ比較的豊富だったが、アワビがごく少なくなった現在、中央カリフォルニア沿岸に3000頭ほどのラッコがいる。

 アワビの大量採取による影響を無視して、ラッコが増えればアワビが減るという因果関係でこの状況をとらえる向きもある。しかし、生態学者の視点で見れば、ラッコはむしろアワビの一番の味方だ。アワビと餌を奪い合うウニの数を、ラッコが抑制しているのである。底生生物として海底に暮らすアワビは海藻の芽やケルプの若い葉を食べるが、ウニは新芽だけでなく生長した根や茎も噛み砕き、ケルプの森を食い尽くしていく。ラッコがいない海ではウニが猛然と繁殖し、ケルプの消滅でアワビは打撃を受けるのだ。

 健全な生態系では、すべてのものに居場所がある。そこではケルプもラッコも、アワビもウニも、そして少数の人間さえも、たくさんの生物たちと共存できる。その生態系に対する理解を深め、しかるべき配慮を忘れなければ、減少してしまった生物たちが回復する可能性はある。それぞれの構成要素の比率にはやや問題があっても、要素そのものはまだかろうじて残っているのだから。少なくとも、今のところは。