第4回 海のシステムを支える生き物たち

 カキの殻をこじ開けて、つるつるした灰白色の身を最初に口にした人は、好奇心と空腹感に抗えなかったのだろう。人間がいかにカキを好んで食べてきたかを示す証拠に、膨大な古代の殻の山が、現在と過去の海岸線を地球規模で縁どるように残されている。

 カキの生涯は危険に満ちている。メスが一度の繁殖期に産む何億もの卵のうち、受精するのはほんの一部にすぎない。幼生として捕食者の群れをくぐり抜け、赤ちゃんカキになって岩や船底、身近にあるカキの殻などに着床できるのは、わずか1%だ。その後、体長7センチほどまでに成長するのに、水温の低い米国ニューイングランド海域だと3、4年かかる。

 居場所を決めたあとのカキは、潮流に乗って運ばれてくるごちそうをせっせと飲みこみはじめる。海水を吸い込んでは、細菌やプランクトンから無機物まで、浮いている粒子を体内に蓄え、きれいになった水を吐き出すのである。

 複雑な形の硬い殻が密集するカキ礁は、レンガやモルタルの建物が立ち並ぶ大都会のようなものだ。微生物はもちろん、魚類やイソギンチャク、ヒトデ、海綿動物、エビやカニなど様々な生物のすみかとなっている。カキ礁とその周辺に生息する生物は、15以上の門(生物の遺伝的分類の主要な区分)に及ぶ。この数は、緑が生い茂る熱帯雨林を含めて、陸上のあらゆる環境に生息する動物門の数とほぼ同じだ。カキがいなくなれば、こうした生物たちの暮らしは崩壊しかねない。