約2カ月にわたって東北沖の海上で挑戦してきた震源断層掘削プロジェクトも、いよいよ最終局面を迎えました。巨大地震を何度も引き起こしてきたであろう「プレート境界断層」からのサンプル採取に挑みます。採れるだけ、採りにいきます。
しかし、ここでも悩みの種がありました。
時間です。サンプル採取のためのドリルパイプを海中に降ろし始めたのは5月10日。航海の期間は、残りジャスト2週間しかありませんでした。
2週間もあるじゃない!とおっしゃるかもしれません。でも本当にもうギリギリだったのです。
理由のひとつは、天候です。
この航海中に流行語大賞にノミネートされた言葉があります。
「WOW」。
ワオゥ!という欧米カブレのリアクションが船上で連発されたのではありません。「Wait on Weather(荒天待機)」という業界用語です。
海上の波高が数メートルを超えると、掘削は続けられません。海底まで長く伸ばしたパイプがもたないリスクがあるからです。ですから波が高くなるたびに、私たちはオペレーションを中断しなければなりませんでした。