最終回 大地震の断層サンプルをゲットせよ!

すべてのオペレーションを終えてドリルフロアから戻ってきたサルハシ隊長を研究チームは全員そろって拍手で迎えました。感動のフィナーレです。「サンキュー、メルシー、アリガトウ!」(写真提供:JAMSTEC/IODP)
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 本当に、この航海はチャレンジの連続で苦しいことばかりでした。
 船上での水素による3・11断層の特定はやはり難しく、陸上での詳細な分析に持ち越されました。そして2大目的のひとつだった温度計測センサーの設置も今夏に再挑戦することになりました。

 ですから、採取したサンプルが、あの地震を引き起こした断層かどうかはまだ分かりません。それでもなんとか、海面下7700メートルの世界からプレート境界断層そのもののサンプル採取に成功したのです。

 5月22日、最後となる21回目のサンプル回収作業を終え、船上は撤収作業に移りました。最後の最後まで粘って科学データとサンプル採取に奮闘してくれたサルハシ隊長たちがドリルフロアから戻ってくるときに、研究チームは全員が整列して拍手で迎えました。

 そして、ここまで持ちこたえていた空が暗くなり、強く雨が降り出しました。試合終了です。

 震源域の大海原で繰り広げられた54日間の闘いは終わりました。探査船という閉じた空間で繰り広げられた知られざる人間模様。

 今回の航海は、いままで誰も到達できなかった深部に挑みました。人類を代表した挑戦、というのは大げさでしょうか。いやそうでもないと思っています。

 この研究航海によって、地震や津波が、すべて理解できたわけではもちろんありません。回収したサンプルやデータの解析はこれから何年もかけて進められていきます。

 地震を自然科学として探求することと、災害としてそれから身を守る具体策とには大きな差があることも感じています。

 それでも、今回の挑戦があったからこそ、人類共通となる新たな知識を、いくつも積み上げることができました。それはあまりにも辛い大災害に見舞われた中から見出すべき、未来への責任とも言えるのかもしれません。

航海レポートの執筆に追われる研究チームのみなさん。25日の下船までもう少し。(写真提供:JAMSTEC/IODP)
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