最終回 大地震の断層サンプルをゲットせよ!

 時間が足りないもうひとつの理由は、深さです。

 海底下を掘削してサンプルを採取するたびに、1回当たり3~10メートル分の岩石が入ったケースを、ワイヤーで船上まで引き上げます。その片道の距離が7000メートル以上もありますから、1日に4~5回の回収ができるかどうか。

 お目当ては昨年の地震でずれた断層のサンプル。何百メートルもの深さまで掘って探したいのですが、すべての深度で採取・引き上げを繰り返していては時間が全く足りません。

 そこで、WOW時間(荒天待機時間)やサンプル引き上げ時間を考慮しつつ、目標深度まで掘削していく時間をシミュレーションしてみると、なんと余った時間が0.003日!(=4分あまり)。想定を超えて天候が荒れたり、トラブルが起きたりしたら、目指す深さまでたどりつけない、そんなギリギリのスケジュールでした。

 どこまで掘るか、どこからサンプルを採取するか。「時間」と「海底下」というふたつの見えない相手との駆け引きが始まりました。

 13日、掘削がスタート。岩石サンプルが次々と船上に回収されてきます。それを調べて「地震で動いた断層だ!」と決定づけるのは、構造地質学者の男前コータローさんの役割でした。これまで幾多の荒野に出かけては、大昔のプレート境界断層の跡を調べてきた男。この人に頼るしかありません。

サンプル採取では、回転数、掘進率、地層にかける重量などの組み合わせを毎回模索しながら技術者がドリルを操縦します。(写真提供:JAMSTEC/IODP)
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