日本にも、ユネスコによって消滅の危機にあるとされた言葉がある。その数は八つ。次の世代に伝え、残すために何が行われているのだろうか。

ダイジェスト

 2009年2月、ユネスコは消滅の危機に瀕した日本の言語として、アイヌ語、八丈語、奄美語、国頭(くにがみ)語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語の八つを選定した。日本では、アイヌ語以外は方言という認識があるなか、おのおのが固有の特徴を持つ一つの独立言語として評価されたことも報道で注目された。あれから3年半。言葉を守り、次世代に伝えるため、現場ではどのような取り組みが行われているのか。八丈島での現地取材を中心に、その背景と現状を探る。

編集者から

 「昨日まで使っていた欠けた汚い茶碗を、いきなりお宝鑑定にやってこられて“利休の名作”と言われてもね。はあ? という感じですよ」。危機言語の現地調査に当たっている国立国語研究所の木部副所長は、各地の高齢者の反応をこう語ってくれました。言葉は日常に根づいているだけに、当事者はその貴重さを説かれても危機感はなく、引き継ぐはずの若い世代も不要なものとしか感じてはいない……でも、確実に変化は起きているようです。ユネスコという国際的な機関の発表は、とかく隣と同じであることを良しとする日本にとっての、良き起爆剤となったのではないでしょうか。実は、言語学的に言えば、東京下町の「江戸弁」も危機言語なのだとか。上記の8言語だけでなく、東北や四国など、各地に残る言葉の大切さも、これを機会に考えてみたいものです。

「危機にある言語の未来」特集のサイドバー「日本の危機言語を訪ねる」本文は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」7月号誌上でお読みいただけます。