第1回 「大型なのに羽毛をもつ恐竜」のなぜ?

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――ユティラヌスは、有名な北米産のティラノサウルスの先祖にあたる血筋になるわけですが、そうすると、ティラノサウルスにも羽毛があった可能性もあるのでしょうか。

 T.レックスはほとんどうろこに覆われていたようですが、わずかながら羽毛があったような痕跡もあるといいます。本当に、ちょっとでも羽毛があったのか、完全にうろこだけだったのか、これも確かな標本が見つかるまでは謎のままでしょうね(注・ティラノサウルスの化石は、公式に知られているものだけで30体以上あるが、皮膚の跡(印象)が残ったものはほとんどなく、わずかにうろこの跡のみが知られる。しかし、民間で発掘され、公式に知られていない標本の中に、羽毛の跡がある化石があるといううわさもある)

――どうして羽毛恐竜は、中国の、それも遼寧省に集中して見つかるのでしょう。羽毛恐竜が、地理的に孤立していたこのあたりだけで栄えていたとか?

 羽毛恐竜は当時地球上のいたるところに分布していたはずだと、私は考えています。もちろん日本で見つかっても何ら不思議はありません。ただ、それがたまたま遼寧省に集中しているのは、やはり第一に地質的要因が大きかったと考えています。

 白亜紀前期当時の遼寧省西部には活発に活動する火山が多く、あたりには火山湖がたくさんあり、その底には非常に緻密な火山灰による堆積層が広がっていました。このような場所に動物の死骸が沈むと、やわらかい組織まで印象が残りやすい。これだけの条件がそろっていた上に、頻繁に火山爆発が起こったことが、羽毛恐竜の化石が集中する原因でしょう。

――日本でも当時の火山灰層が発見されれば、期待がもてそうですね。次回は、遼寧省で数多くの恐竜を発見してきた徐星さんイチオシの恐竜についてうかがいましょう。

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徐星さんが監修し、ユティラヌス・フアリの化石や復元全身骨格が展示される「世界最大 恐竜王国2012」が、7月21日(土)~9月23日(日)まで千葉・幕張メッセで開催されます。くわしくはこちら

徐星

中国科学院古脊椎動物・古人類研究所(IVPP)の研究員、教授。羽毛のある恐竜をはじめ、数多くの新種恐竜を発見・発表してきた。その数は50種近くにのぼり、史上最多の記載数とされる。現在は中国遼寧省や内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区で恐竜の調査を行っている。北京大学地質学科卒業。1969年生まれ。


金子隆一

サイエンスライター。恐竜などの古生物をはじめ、生命史、宇宙科学、近未来技術など幅広いジャンルの著作がある。著書に『知られざる日本の恐竜文化』『ぞわぞわした生きものたち』など。1956年神戸市生まれ。