地球の富を再確認し、人類共通の未来を築く場に

 たとえば最高のスチール糸を超える強度と柔軟性を備えたファイバーを、クモやカイコは「常温・常圧」で、極めて省資源で作ることができます。砂漠などの厳しい環境でも、エネルギーを使わずに自然空調をしたり、空中の水蒸気から水を集めるノウハウを、アリ塚や砂漠のトカゲ、昆虫から学ぶことができます。人工の建物やインフラは数十年でメンテナンスや修復・廃棄物処理の問題が生じるが、自然界には分解と循環のサイクルにより“ゴミ”は存在しません。私たちのからだも含め、すべての生命体は分子レベルで絶えざる解体と修復を繰り返し、つねに「新品」になり続けているゆえに、病気やけが以外は基本的にメンテナンスフリーです。

 こうした新たな眼で生命や自然世界を再発見してみると、私たちが「生物多様性」や「地球環境」と呼んでいたものが、人類の未然形の技術文明へのヒントに満ちた、驚くべきソフトウエアの宝箱であると気づきます。「枯木に花咲くに驚くより、生木に花咲くに驚け」という江戸時代の思想家・三浦梅園の言葉通り、まさに現代は科学の解像度が高まることで、地球の真の富=生物多様性の価値がやっと理解できるところまで来たということです。

「生物多様性」という宝箱の再発見

 20世紀の科学技術文明は、進歩しすぎたゆえにでなく、幼年期で未熟だったがゆえに地球環境に負荷をかけてきました。人工の都市も砂漠も、植物の光合成のように太陽エネルギーを捕獲していく「自然の一器官」になれば、そして資源やゴミをエレガントに循環させるシステムに成熟すれば、私たちは「地球と人類の共進化」の新たなステージを構想しうるのです。

「リオ+20に寄せて:竹村真一さん(文化人類学者)」最新記事

バックナンバー一覧へ